老犬の夜泣きが始まると、飼い主の生活は一変します。「認知症なのかな」「死期が近いという記事を見て怖くなった」「正直、眠れなくてつらい」——どれも当編集部に届く、切実な悩みです。最初にいちばん大事なことを言います。夜泣きの原因は1つではなく、「認知症」と自己判断してはいけません。獣医師の解説では、トイレに行きたいだけだった・体が痛かったなど、対処できる原因が見つかるケースが珍しくないからです。この記事では、獣医監修情報と一次資料をもとに夜泣きの原因の切り分け方・受診の目安・呼吸のチェック法を整理し、あわせて夜の見守りをテックで楽にする方法と、飼い主さん自身が潰れないための選択肢まで解説します。
※本記事は情報の整理が目的で、診断はできません。気になる変化があれば、かかりつけの獣医師に相談してください。シニア期のテック全般はライフステージ別ガイド、猫の場合は老猫の見守りガイドをどうぞ。
まず結論:夜泣きは「叱る・我慢する」より「記録して受診」

夜泣きへの最初の一手は、しつけ直しでも我慢でもなく記録です。いつ・どのくらい・どんな様子で鳴くかをメモと動画で残し、それを持って受診する。獣医師の診断には「いつから・どのくらい変化したか」の情報が効くうえ、夜の様子は診察室では再現できないからです。
- STEP1 記録する——鳴く時間帯・長さ・様子(歩き回る/一点を見る/トイレの前後)を1週間分。スマホ動画やペットカメラの録画が最強の問診材料になります
- STEP2 受診する——「年のせい」と決めつけず、まず体の病気がないかを獣医師に確認してもらう
- STEP3 環境を整える——原因に応じて昼夜リズム・寝床・照明を調整し、テックで見守りの負担を下げる
老犬は何歳から?——「小型8歳前後・大型6〜7歳」だが幅がある
日本の獣医師監修情報では、おおむね小型犬(10kg未満)は8〜9歳頃、中型犬は7〜8歳頃、大型犬は6〜7歳頃からシニア期とされます(体が大きいほど早い)。一律「7歳から」と案内する動物病院も多くあります。
米国動物病院協会(AAHA)の2019年犬ライフステージガイドラインは、シニアを「その犬の推定寿命の最後の25%」と定義しています。固定の年齢ではなく、犬種・体格で変わる——つまり「うちの子は何歳からシニアか」はかかりつけで聞くのが正確です。本記事の内容は、このシニア期に入った子の変化を想定しています。
老犬の夜泣き、考えられる原因は1つじゃない
獣医師の解説をまとめると、夜泣きの背景には次のようなものがあります。上から順に「対処しやすいもの」です。
| 考えられる背景 | ヒントになる様子 |
|---|---|
| トイレに行きたい | トイレ前後に鳴く・粗相が増えた |
| 空腹・喉の渇き | 食事時間の変更で改善する |
| 寝床が合わない・体の痛み | 立ち上がりを嫌がる・触ると怒る |
| 昼夜逆転(日中寝すぎ) | 日中ぐっすり・夜に元気 |
| 不安(視力・聴力の低下) | 暗いと鳴く・そばにいると落ち着く |
| 病気(関節・内臓・脳など) | 食欲低下・体重減少などを伴う |
| 認知機能不全(CDS) | 下のDISHAAチェック参照 |
大切なのは、認知機能不全は「他の原因を除外して」たどり着く診断だということ(米獣医行動学の標準的な考え方)。獣医師も「認知症だからと先入観を持たずに見てあげて」と繰り返し注意しています。実際には「トイレが遠くて自力で行けず鳴いていた」——そんな、環境で解決できる理由も多いのです。
「夜泣きが始まると死期が近い」って本当?
検索されがちな不安ですが、「夜泣き=死期のサイン」と裏づける獣医学的な根拠は、当編集部の調べでは確認できませんでした。夜泣きは上の表のとおり原因が幅広く、環境調整で改善する例も多くあります。ただし、背景に心臓や内臓の病気が隠れていることはあり得るので、「夜泣きくらいで病院は大げさ」と放置しないことがいちばん大事です。不安をあおる情報より、目の前の子の記録と受診を。
認知機能不全(CDS)の基礎知識と「DISHAA」チェック
犬の認知機能不全症候群(CDS)は、加齢にともなう脳の変化で起こります。米国の代表的な調査(JAVMA掲載・2001年)では、11〜12歳の犬の28%、15〜16歳では68%に1つ以上の兆候が見られました。年齢とともに珍しくない変化です(なお「柴犬・日本犬に多い」という説は、裏づけるデータと否定するデータの両方があり、確立していません)。
獣医療で使われるチェックの枠組みが「DISHAA」です。当てはまるものが増えてきたら、受診時に伝えてください。
- D(見当識障害): 慣れた場所で迷う・ドアの開かない側で待つ
- I(交流の変化): 過度に甘える/逆に関わりを避ける
- S(睡眠サイクル): 昼夜逆転・夜間の徘徊や落ち着きのなさ
- H(粗相・学習の低下): トイレの失敗・覚えていた指示への反応低下
- A(活動の変化): 遊びへの興味低下・目的のない歩き回り(ぐるぐる回り続けるなど)
- A(不安): 新しい物や音を怖がる・分離不安
「ぐるぐる回る」「壁に頭を向けて立ち尽くす」などはCDS以外の脳の病気でも見られるため、ここでも自己判断せず受診が原則です。
「息が荒い・呼吸が早い」は夜泣きとは別枠で急いで
夜泣きと並んでシニア期に増える相談が呼吸の変化です。これは夜泣きより優先度を上げてください。獣医循環器の資料では、安静時・睡眠時の呼吸数の正常目安は1分あたり15〜30回。眠っているのに30回/分を超える状態が続くのは、心臓病の早期サインとしてよく知られています(咳や元気消失より先に現れることがあります)。
- 測り方: 眠っているときに胸の上下を数える。30秒数えて2倍すれば1分あたりの回数です
- 口を開けたままのハアハア(パンティング)が続く、お腹を大きく使う呼吸、舌の色が悪い——これらはすぐ受診のサイン
- 心臓病と診断されている子は、獣医師の指示に沿って毎日の呼吸数記録を習慣に。スマホのメモでも十分です
呼吸が苦しい子の在宅ケアとして、獣医師の指示のもとでペット用酸素室(在宅酸素)が使われることがあります。心臓・気管や肺の病気、ターミナルケアの緩和で用いられるもので、濃度や使用時間は獣医師とレンタル業者の指示に従う領域です。費用感や業者の比較はペット用酸素室レンタルの記事で詳しく解説しています。
💨 呼吸ケアの選択肢
獣医師と相談しながら在宅酸素を検討したい方には、家庭用ペット酸素室の月額レンタル(初期費用0円・全国対応)という選択肢があります。合う・合わないは個体差が大きい分野です。導入は必ずかかりつけの獣医師に相談のうえ検討してください。
夜の見守りをテックで楽にする
夜泣き対応の最大の敵は飼い主の睡眠不足です。「隣の部屋から様子だけ確認できる」体制を作ると、毎回起き上がって見に行く負担が減ります。
- 暗視対応のペットカメラ: 夜間モードのあるカメラなら、暗い部屋の様子をスマホから確認できます。Furboはカラー暗視と吠え検知の通知を搭載しており、「鳴いたときだけ通知を受けて確認」という運用ができます。録画を獣医師に見せれば、夜の様子がそのまま問診材料になります
- 静止画より「記録」: 鳴いた時刻の通知履歴・録画クリップは、そのまま夜泣きログになります。機種の選び方はペットカメラおすすめ比較へ
- 徘徊が心配な子: 昼間の脱走・迷子対策としてGPSという選択肢もあります(犬用GPSの比較。Tractiveなど現行機は活動量・睡眠の記録機能も持っています)
💡 Furbo公式ストアでは、クーポンコード LINK2000 の入力で2,000円引きになります(不定期セールの期間中は適用外です)。
なお、犬用の活動量計として知られたPLUS CYCLE(プラスサイクル)は2026年8月末でサービス終了が告知されており、新規購入はできません。ネットの古いおすすめ記事にはご注意を。
環境でできること:獣医師推奨の「昼夜リズム」づくり
獣医師が非薬物の対策としてすすめるのは、大きく3つです(効果には個体差があり、「治す」ものではなく生活の質を整える工夫です)。
- 昼を活動的に——朝の散歩や日光浴で体内時計を整える。昼に長く寝ていたら優しく起こして声かけ・ノーズワークなど短い刺激を
- 夜を安心に——真っ暗を怖がる子にはやわらかな常夜灯。寝床は段差なく水飲み場を近くに、体圧を分散する介護マットも選択肢です。スマート照明を使えば「夜は自動でほんのり点灯」も組めます
- 温度と寝床——シニアは体温調節が苦手です。夏の空調は夏の留守番ガイド、冬のヒーターの安全な使い方を参考に(犬にも考え方は共通です)
おむつ・介護マット・食事台などのアナログな介護用品は、専門通販でまとめて揃うので、必要になったときに慌てず済みます。
サプリメントや療法食(MCTオイル・DHA/EPA配合など)は「脳の働きを支えることが報告されている」段階の話として、必ず獣医師に相談してから。市販品の自己判断での併用はすすめません。
飼い主が潰れないために——「頼る」も立派な介護
夜泣きの介護で睡眠を削られ続けると、飼い主側が体調やメンタルを崩すことがあります。獣医師の発信でも、睡眠不足と近隣への気兼ねで飼い主が精神的に追い込まれることがはっきり言及されています。限界まで1人で抱えないでください。
- 動物病院に「飼い主がつらい」と相談する——環境調整のほか、獣医師の判断で不安をやわらげる薬などの選択肢が検討されることもあります。相談は恥ずかしいことではありません
- 一時的に預ける——ペットホテルや動物病院への短期のお預かりで、まず自分が一晩眠る
- 老犬ホーム・デイケア——有償でシニア犬を預かる事業は、環境省の制度上「第一種動物取扱業(譲受飼養業など)」の登録が必要です。検討する際は自治体登録の有無・面会可否・医療連携を必ず確認してください
「うちの子のために自分が倒れる」がいちばん避けたい結末です。頼れる先を知っておくことも、シニア期の備えの一部です。
よくある質問
Q. 夜泣きを叱ってやめさせてもいい?
A. おすすめできません。原因が痛みや不安の場合、叱ることで悪化し得ます。まず記録と受診で原因を探るのが先です。
Q. 夜泣き=認知症でしょうか?
A. 限りません。トイレ・空腹・痛み・不安など対処できる原因も多く、認知機能不全は他の病気を除外して診断される領域です。DISHAAの項目に複数当てはまるなら、その旨を獣医師に伝えてください。
Q. 睡眠中の呼吸が速い気がします。様子見でいい?
A. 眠っているときに30秒×2倍で数えて、30回/分を超える日が続くなら受診を。呼吸の変化は「様子見」より「早め」が鉄則です。
Q. 老犬ホームはかわいそう?
A. 事情は家庭ごとに違います。飼い主が倒れて世話が破綻するほうが犬にとっても不幸です。登録済みの事業者か・医療連携があるかを確認したうえで、選択肢の1つとして知っておく価値はあります。
まとめ:記録→受診→環境。この順番なら夜は必ず楽になる
- 夜泣きの原因はトイレ・空腹・痛み・昼夜逆転・不安・病気・認知機能不全と幅広い。自己判断せず、記録を持って受診
- 「夜泣き=死期」の根拠は確認できず。ただし放置せず受診が前提
- 睡眠時の呼吸数30回/分超の継続は別枠で急ぐ。在宅酸素は獣医師の指示のもとで(費用の記事)
- 夜の確認は暗視カメラと通知で「起き上がらない見守り」に
- 飼い主の睡眠は介護の土台。預ける・頼る選択肢も備えのうち
シニア期の変化は、猫の場合も考え方が共通です。猫を飼っている方は老猫の見守りガイドもあわせてどうぞ。


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